今日の短編(24) レイモンド・カーヴァー「収集」

この奇妙な読後感は以前にも感じたことがある。いつか、どこかで読んだことがある。誰が、何を収集しているのだろう。原題は Collectors 複数形だ。所属する場所をなくした人間は所在無げで頼りない。
レイモンド・カーヴァー「収集」 (Collectors by Raymond Carver)

僕は水を火にかけた。それが沸騰し、僕がカップを二つ用意したときには、彼はもう何もかもをばらして、ケースにしまいこんでしまっていた。それから彼は手紙を拾い上げた。彼は封筒の宛名を読み、差出人のアドレスをしげしげと眺めた。その手紙を二つに折り、尻のポケットに突っ込んだ。僕は彼のことをじっと見ていた。ただそれだけ。コーヒーは冷めはじめていた。

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

所収。