今日の短編(41) レイモンド・カーヴァー「合図をしたら」

日常のちょっとした「ずれ」が積もり積もって気が付くと二人の間に大きな隔たりをもたらしている。すごく我慢してるんだろうなぁ。この男性。
レイモンド・カーヴァー「合図をしたら」(Signals by Raymond Carver)

「我々はこういう機会をもっとちょくちょく持つべきだね。」と彼は言った。
彼女は肯いた。
「ときどき外で食事するのもいい。もしそうしてもらいたいのなら、僕はもっと努力するけれど」
彼女はセロリに手をのばした。「すべてはあなた次第よ」
「それは違うだろう!なにも僕がやったわけじゃ・・・その・・・」
「何をやったのよ?」と彼女は言った。
「なんだって君の好きにすればいいさ。知ったことじゃない」と彼は視線を落として言った。
「本当にそう思うの?」
「なんでそんなことを言っちゃったんだろうな」と彼は言った。

「君が何をしようがこっちの知ったことじゃないね」と彼は言った。
「それ、本心なの?」と彼女は言った。
彼はフォークを放り出し、ナプキンをテーブルの上に投げた。

頼むから静かにしてくれ〈2〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

頼むから静かにしてくれ〈2〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

所収。