吉田秀和さんのガイドでゴールトベルク変奏曲を聴く
グールドのピアノは、よほど特異である。彼はそれを自分で「あまりギア-の切りかえのない自動車」にたとえている。「私の自動車では、私がドライヴするのであって、自動車が私を運んでゆくのではない」
クラシックでもスウィングするんだ。というのが1番初最初に聴いた時の印象だった。人差し指が膝が、自然と拍を取ってしまう。どんな速度でも非常に粒の揃った音の流れが押し寄せてくる。1音1音が非常に繊細にコントロールされているという印象とそれに反するように聞こえてくるピアニストの歌い声。そのギャップに僕にはなんだかとても惹かれてグールドを聴くようになった。
偶然見つけた吉田秀和さんの「世界のピアニスト」の一番最初はこのカナダのピアニストグレン・グールドから始まっている。1955年6月に録音されたデビューアルバム、「ゴールトベルク変奏曲」に関する文章だ。とても困難であることが容易に想像できる「音楽」というものを専門に聴き続けてきた人の、一筋縄では作り上げられなかったであろうその文体をゆっくり噛みしめながら、アルバムを聴き、また文章を戻り、またアルバムを聴く。
グールドは、いわばピアニストであるゆえに、アンティ・ピアニストなのだ。このレコードをきいても、はっきり私たちに聞こえてくる、いかにグールドが、ピア二を用いて、チェンバロ的にノン・レガートで、多くの声部を処理しているかが。これはグールドによるピアノの逆説的奏法といえよう。
美術でも音楽でも、ここにこんな流れがある、こんな印がある、と教えてもらわなければ気がつけないポイントがある。もちろん知らなくても鑑賞することは可能だけれども、知っていればより多面的に多層的に理解を深めることができる。
音楽理論についての部分はちんぷんかんぷんなのだけれども、この吉田秀和さんの文章をたよりに、グールドのゴールトベルク変奏曲を聴き直していくことで、新しい発見が見つけられそうな気がしている。
「世界のピアニスト」にはグールドを含めて28名のピアニストが取り上げられている。さっき妻に来てみたら、アシュケナージ、ルービンシュタイン、ホロヴィッツのCDはあると思うと話していた。時間を作ってのんびりと読んで聴いて、また読んでとしてみたい。
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