今日の短編(64) 藤沢周平「日和見与次郎」

甘酸っぱい思い出が最後は切ない。

「丹羽派も畑中派もおれにはかかわりがない。性分で、徒党を組むのは好かぬ」
「みんなにそう言って、日和見与次郎などと言われているらしいが……」
三宅は、口吻にわずかに威嚇する気配をつけ加えた。
「いまに、それでは通らなくなるぞ」
「……」

与次郎どの、と織尾が言ったように思った。今夜はずいぶんと手ぎわのよろしいこと、お見事ですよ。見たのはわたくし一人・・・・・・、二人だけの秘密にしましょうね・・・・・・。

たそがれ清兵衛 (新潮文庫)

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