今日の短編(6) ポール・セロー「ダイス・ゲーム」

ポール・セロー「ダイス・ゲーム」(A GAME OF DICE by PaulTheroux)

当地ではバーの客たちは次のおかわりを誰が払うかを賭けてそれを転がすのだ。私はダイスを振るときに男たちが顔に浮かべるひどく真剣な表情や、むき出しになった歯を目にして、しばしば思ったものだ。我々のもっとも攻撃的で、もっとも競争的で、もっとも動物的な側面は、我々のおこなう勝負（ゲーム）の中に出てくるものなのだなと。

「彼女は今どこにいるの？」
「サーファーを見つけた。今は上で二人でいる」。彼は幸福そうに見えた。まだサイコロを転がし続けている。
「どっちが勝ったんだい？」
「どっちだと思う？」

バースデイ・ストーリーズ (村上春樹翻訳ライブラリー)

所収。