集合写真

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 この仕事を始めて、大人数の集合写真を撮る機会が増えた。なんとなく集まって、こっち向いて、はいチーズ!と済ませていたが、そのうち撮れなくなってきた。どう撮ろうかわからなくなってしまった。はい、チーズで写すことはできる。しかし僕には、それが良い写真には、あまり、思えなくなってしまった。

 集合写真の撮り方を、一番真剣に考えたのは初担任のクラス開きの時だった。担任を持つ生徒たちを入学式の直後、初めてクラスに連れて来て、色々な話や説明や書類の回収などを始める前にクラスの集合写真を撮った。僕と生徒たちはほとんど初対面でお互いの事を全然知らない。入学式後のロングホームルームでは、すべき話と集めるべき書類が、とてもとてもたくさんある。クラス写真を撮る時間なんて全然ない。でも撮りたかった。

 数日前から撮り方を考えた。カメラの位置、焦点距離、生徒の配置、絞り、ISO、シャッタースピード、フラッシュの有無。色々試してみた。上手く撮れるんじゃないか、という設定を探した。入学式の後、生徒たちを連れて教室に入る。まずは写真が撮れるように生徒に動いてもらい、少し話をして、試しにシャッターを切る。大丈夫そうなのを確認して、セルフタイマーで3枚。以上。その後は、長い長いロングホームルーム。

 体育祭、文化祭、球技大会、クラスの解散する三学期の終業式。クラスの集合写真を撮ってきた。5枚も6枚も撮っていると新鮮味も薄れ、いつまでやるんだ、という空気になる。表情だって良くはなくなってくる。

 たどりついた結論は、さぁ撮るぞ、と声をかける前にどれだけこんな風に、という自分のイメージを追い込んでおけるか、カメラの設定を先に決めておけるか。それがとても大事だということだった。次にシャッターを切る前に、全員の身体が切れることなく、きちんと入っているか、服装や髪形が乱れていないか、余計なものが入り込んでいないかを確かめることだった。

 ここまでを出来るだけ端的にシンプルに済ませる。済ませつつ、同時にリラックスした雰囲気を作っていく。声かけや言葉の使い方や口調などで、なんだか楽しいような雰囲気を作っていく、シャッターを切る直前までの時間が一番大切だと僕は思っている。撮られることに緊張していつつ、撮られることを忘れさせるとでも言うのか。作りすぎない、自然な、リラックス表情で写って欲しいと思う。シャッターが切れるのは一番最後なのだ。そこまでをどう作り込んでいくか、それが大切みたいだ、と思ったのだ。

 なんだそんなこと、かもしれないが、僕には発見だった。これに気がついてから教室に入って、撮影を終えるまでの時間が格段に楽しくなったし、格段に短くなった。撮れた写真が良いと思える写真になってきた、とまで言えないのがくやしいところではある。