50分を作り上げる「型」

扉を開ける、教室の全体を漠然と眺める。教卓に向かい、チャイム、号令。授業の最初は必ず漢字の小テスト。その日の範囲を黒板に書き出す。一人で、静かに、集中する。まっすぐに机に向かい、手を動かす。大声を張り上げる必要はない。

シャープペンシルを持って集中しているように見える。所々顔の向きが違う、机がずれている、机上に物が多い、そんな場所がある。40人弱を相手にしているので、一人一人としっかり話をする時間はそれほどない。机間を巡りながら小さな声で一言、二言声をかけるだけ。

僕が嫌なのではない。誰かの私語が、集中している者の迷惑になる、邪魔になる、だから慎んだ方が良い、一貫してこれしか言ってこなかった。

誰も一言も話をしない時間を作りたいのではない。思ったことは口に出して欲しい、ただ、今それを全体に発しても良いのかどうか、それだけを気にして欲しいと頼んでいる。授業はライブだと以前書いた。*1よりよいライブをもたらすには相互の協力と努力が不可欠で、協力を求めるための準備は事前にかなり出来うるのだと思う。

彼らに何かを伝えようとする時に僕の出来ることはそれほど多くはない。環境を整えること、聞いてもらう努力を払うこと。雰囲気を作ること。堅苦しいと愚痴られながらも、ある程度の「型」は必要だと信じている。