今日の短編(66) 藤沢周平「祝い人助八」

「祝い人(ほいと)」、物乞いのことで身なりが汚いので「祝い人助八」と呼ばれるようになった男の話。周りが見えなくなると、身なりや家のことにお構いなしになるのはいつの世も同じことで、気になる異性ができると、それに急に気がついたりするのもこれまた何処も同じ。

「伝えた技は、わが身を守るときのほかは、秘匿して使うな。人に自慢したりすると、のちのち災厄をまねくことになるぞ」

波津がそこにいるだけで、身のまわりがあたたかいのを助八は感じた。そしてやもめ暮らしの歪さも、このときはよく見えたのである。

たそがれ清兵衛 (新潮文庫)

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