小林秀雄全作品から(12)「鉄斎Ⅲ」

  • 昭和30年(1955)1月、「現代日本美術全集」第1巻に発表

岩とか樹木とか流木とかを現そうと動いている線が、いつの間にか化けて、何物も現さない。特定の物象とは何んの関係もない線となり、絵全体の遠近感とか重量感とかを組織する上では不可欠な力学的な線となっているという風だ。

ああいう夢が実現できる為には、自然を見てみて、それがいったん忘れられ、胸中に貯えられて了わなければならないであろう。

小林秀雄全作品〈21〉美を求める心

小林秀雄全作品〈21〉美を求める心

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