今日の短編(60)トルーマン・カポーティ「感謝祭のお客」

一日がスタートする朝食を抜いて、昼はさくっと、で、夕食が一日で一番立派な食事に、なんてことが社会人になってから何年も続いていた。回りを見ても結構そんな風な人が多かった。でも実際のところ、夕食のあとはたいしてカロリーは使わないで眠るだけなんてことが多い。

朝食を食べる時間も惜しんで寝ていたい、とずっと思っていたけれども、少しだけ時間を作って朝ごはん食べていくと、午前中の間、頭の働きが眼に見えて違う。朝から疲れてくたびれてシャキッとしない、ということが減った。それ以来、朝食はきちんと取る派に転向した。こんな立派な朝食、食べてみたいなあ。

トルーマン・カポーティ「感謝祭のお客」(The Thanksgiving Visitor)

朝食がわたしたちのいちばん大事な食事だった。夕食と日曜日以外の昼食は簡単なもので、ときどきは朝の残りですませることもあった。それに比べ朝の五時半にきちんと出される朝食は、いつも腹いっぱいになる食事だった。いまでもわたしは、あの早朝の食事を思い出すと空腹を感じて懐かしくなる。ハムとフライド・チキン、ポークチョップのフライ、ナマズのフライ、リスのフライ(季節による)、目玉焼き、肉汁をかけたひきわりトウモロコシ、黒エンドウ、野菜スープ、かゆ状にしたトウモロコシパン、ビスケット、パウンド・ケーキ、はちみつをつけたパンケーキ、みつがたっぷりついたはちの巣、自家製のハムとゼリー、搾りたてのミルク、バターミルク、チコリの香りをつけた舌が焼けそうに熱いコーヒー。

「モリーのような人たちに私たちが出来ることは、敬意を払って、お祈りのなかにあの人たちのことを忘れないことよ」

夜の樹 (新潮文庫)

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