(手帳6)メモと描写

ブログの文章は、直ぐに忘れてしまいそうな些細なことや、日々の思いつきのメモや備忘録や読んだり見たり聞いたり思ったことの記録のストックのようなものだと思う。自分のためには勿論なるし、誰かの役にたったりすればそれは素晴らしいことだろう。そんな、これまでだったらあくまで個人のものでしかなかったメモが広く公共性を持ちうるという点はブログのとてもおもしろい点だと思う。

  • (手帳6)メモと描写 高校生のための文章読本 より

メモは他人に見せるためのものではない。いわば表現の舞台裏だ。箇条書きでもよい。文になっていなくてもよい。少々乱雑であっても、順序など気にせずに書き込んでゆこう。描写に重点をおいて記憶を掘り起こしたり、本で調べたり、現物にあたったりもしてみよう。必要ならば、印、線、図なども使って思考の流れを視覚化すると、自分の考えが整理されてわかりやすいかもしれない。自分にあったやり方、工夫を考え出してゆくことだ。ただし、一度書いたメモは消しゴムで消してしまわないようにしたい。いったん線を引いて抹消したメモが、後で生きることも多いからだ。メモこそは作文の中心作業である。

描写とは、たとえば目の前にある樹を見て、辞書の記述のようにどんな樹にも通用する説明(一般的)をするのではなく、樹そのもの(個別的)がどんな樹であるのかを書くことである。自分がとらえたその樹の印象を書くことである。

高校生のための文章読本

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