今日の短編(54) 川上弘美「長い夜の紅茶」

平凡。ひとくくりにしてはみても、それぞれのあり方は千差万別。

「男なんかと一緒にいて、女が幸せになるものなのかしらと思ってさ」

平凡。わたしはまたその言葉を思う。この夏には、きっとわたしたち家族は二泊くらいで、山か海に行くことだろう。由香里には私立の中学を受けさせてみよう。章太郎が地元の中高一貫の公立に入れるといいのだけれど。誰も事故にあったり死んだりしませんように。司郎の浮気ぐらいは我慢すること。

新潮社の新しい文芸誌「yomyom」所収。