武満徹「吃音宣言―どもりのマニフェスト」

武満徹吃音宣言―どもりのマニフェスト」 高校生のための文章読本より

音と言葉を一人の人間が自分のものにする最初の時のことを想像してみたらいい。芸術が生命と密接につながるものであるならば、ふと口をついて出る言葉にならないような言葉、ため息、さけびなどを詩とよび、音楽とよんでさしつかえないだろう。そうした行為は、生の挙動そのものなのだから・・・・・・。それは論理の糸にあや織られるまがいものではなく、深く<世界>につらなるものであり、未分化のふるさとの豊かな歌なのだ。

高校生のための文章読本

高校生のための文章読本

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