今日の短編(43) 森鴎外「杯」

すっと背筋の通った毅然とした態度が目に浮かぶ。大勢に流されない確固とした自分を持っていたいものである。
森鴎外「杯」

第八の娘の、今まで結んでいた唇が、この時始て開かれた。
"MON. VERRE. N'EST. PAS. GRAND. MAIS. JE. BOIS. DANS. MON. VERRE"
(モン ヴェエル ネエ パア グラン メエ ジュ ボア ダン モン ヴェエル)
沈んだ、しかも鋭い声であった。
「わたくしの杯は大きくはございません。それでもわたくしはわたくしの杯で戴きます」と云ったのである。

山椒大夫・高瀬舟 (新潮文庫)

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所収