24/50「世にも美しい日本語入門」

世にも美しい日本語入門 (ちくまプリマー新書)

世にも美しい日本語入門 (ちくまプリマー新書)

共著者の一人安野光雅さん(「旅の絵本」の作者と言えばご存知の方も多いだろう)は、もう一人の共著者の藤原正彦さんの小学校時代の先生だという。

これは自分でも試してみよう、真似してみよう、生徒に話そう、調べてみよう、と思うヒントがたくさん。藤原さんは岩波文庫を使った読書ゼミをしてらっしゃるという。学生があまりに本を読んでいないので、読ませようと思って10年以上という。

藤原 最初からこれを受講するための条件を公表します。まず、一週間に岩波文庫を一冊読むだけの根性。それから、一週間に岩波文庫を一冊買うだけの財力。その二つだけを条件としてあげるんです。それに怖じけない子だけがくる。読む本は私が一方的に決めます。教室では民主主義は存在しません。私が「これを読んでこい」と命令する。
(中略)
 授業では、批評なり感想なり書いてきたものをもとに、皆でディスカッションする。感想でも批判でも批評でもなんでもいい。書くものの長さは、特に制限なく自由に書け、と言います。私がそれを添削して翌週の授業で返す。文章力の向上にもなるし、もちろん知らない本を読んで教養も身につく。授業中のディスカッションで論理的な言葉の応酬をしますから、論理的思考の訓練にもなっています。

安野 大学くらいになったら、文学教材がそのまま日本語教育になっていいと思います。文学以外にいい教材は考えにくいですね。情報を日本語として読むためには、さきに文学で鍛えて、疑いの目(一種の免疫力、豊かな感受性)をつけておく必要があると思います。昔から創造性の大切さが喧伝されていますが、それは「疑う心」とセットになっているべきだ、とこの頃思っています。
 文学作品に接することは、そこに書かれている筋書きのような「ことがら」だけでなく、たとえば詩から受けるような「美しさ」に心を動かされる感情を培うことでもあると思います。

安野光雅さんは、いろいろな自著の中で森鴎外の訳した「即興詩人」を薦めていて、読んでみたいとずっと思っているのだけれども、どこに行っても見つけられない。ので、藤原さんの薦めている岩波文庫を大量購入。平成18年度に読みこむ本にしたい。

漢文、暗唱、唱歌、童謡についての二人の語らいもおもしろく、ためになる。国語が好きで本が好きだと思っていたけれども、まだまだ全然足りないと思わされました。勉強勉強。