2007-01-29から1日間の記事一覧

(手帳2)一番古い記憶

自分史を書いてもらうために、授業のたびに一つの質問に答えるメモを取り続けてもらったことがある。7ヶ月か8ヶ月くらいかけて答えてもらった30数個の一番最初の質問が「あなたの一番古い気を句を教えてください」であった。お、と興味を引いてもらいやすい…

森茉莉「猛獣が飼いたい」

当たり前を、平凡を拒絶した、超越しているような感性。 森茉莉「猛獣が飼いたい」 高校生のための文章読本より 私が若かったとして、だれかがおむこさんを紹介してくれるよりも、一匹のライオンの仔か、黒豹の仔(両方ならなお満足)をくれた方がうれしい。…

野間宏「地獄篇第二十八歌」

野間宏「地獄篇第二十八歌」 高校生のための文章読本より 両手をズボンのポケットにつっ込み、つっ立っている長身の彼の体には、自分で自分の体を扱いかねているような不自由で苦しげなところが露わに表れている。 高校生のための文章読本作者: 梅田卓夫,清…

I・ディネーセン「イグアナ」

物凄くステキで輝いてみえていたものが、手に入れるとありきたりのなんてことないものに見えてしまうのは何故だろう。 I・ディネーセン「イグアナ」 高校生のための文章読本より 私はイグアナの死体が横たわる石に向かって歩いていった。ほんの何歩といかな…

吉行淳之介「蠅」

性を意識する時に感じた自分の肉体が自分でないような、違和感と拒絶感。同様に他者の肉体も同じように遠く受け入れがたいものと感じられる。 吉行淳之介「蠅」 高校生のための文章読本より その瞬間、少女はよろけて、半歩遅れた。立ち直ったとき、目の前に…

(手帳1)表現への扉をひらく

どの作品を選択するか、どこを引用、抜粋するかという選者の目が、意思がアンソロジーの価値であり、醍醐味なのだと思う。どう見るか。どう書くか。視点の多様性と幅の広さを一同に見ることは非常に面白く価値のあることだと思う。 (手帳1)表現への扉をひ…

小林秀雄全作品から(4) 「教育」

身も心もおじさんですから、などとうそぶきつつ、内心すぐ近くに寄り添っていたつもりだったけれども、気がつけば、彼らと僕の年齢上の差はどんどん広がっていく。はじめから大変なことだったけれども彼らの世界をなんとなく理解するだけでも、その困難は年…

小林秀雄全作品から(3) 「自由」

事物と、物事。身体と体と躯・・・言葉が違うということは、その意味するところのものにはなにかしらの違があるはず。しかしその我々がその差異を意識することはほとんどない。自由という言葉は懐の深い、たくさんのニュアンスを飲み込んでしまう言葉なのだ…

今日の短編(49) トルーマン・カポーティ「夢を売る女」

全てを欲しがる欲望は何を求めているのか判らない焦燥感がもたらすもの。 時と夢を燃料にメリーゴーランドのようにぐるぐるまわってどこにも行かず。 寒くて、淋しくて、やるせない。 トルーマン・カポーティ「夢を売る女」( Master Misary by Truman Capote…