余談が苦手

余談という奴が苦手だ。もともと座持ちの悪い話し下手と自覚していて、どうも長話をする勇気が持てない。宴席でも話すより聞いている方が落ち着くタイプだ。多数を相手に脈略のない話をしていると、授業の「意味の含有率*1」が落ちていってしまう気がして、積極的にしたいとは思わない。その話題がフィットするのは40人中1人だけかもしれないのだ。残りの39人にとっては興味の持てない退屈な時間になってしまう。しかし、余談にその人となりが表れてくることも確かで、余談の代替になり、また僕自身を知ってもらうためにできる事はないかということもあって思いついたのが質問紙だった。


質問紙とは何かというと、毎時間の僕と生徒たちのやりとりの総称だ。50分の授業の中で感じた、質問、疑問、意見、感想、希望、要望などなどを毎時間小さな紙に書いてもらう。僕はそれを受けて次の時間までに答えを作成し、1枚のプリントにまとめる。提出の際は記名してもらうが、返却時の回答のプリントでは質問は匿名で並んでいる形にした。


この質問紙の回答を授業のはじめに返却し、いくつかコメントをする。同じ時間をすごしていて、クラスメイトがどんなことを考えたのか、どんな疑問を持ったのか、それに対して僕がどう答えているのか。これが一望できるようにした。授業に関する質問が思いつかなかった場合は、どんなことでも良いので書いてもらっている。部活のこと、行事のこと、家族のこと、僕の個人的なこと、たまに悩み相談も飛び込んでくる。


授業の中で話をするからには、彼らの多くが興味を持ちやすく、共通した話題を前提にした方が良い。僕の授業に対する生徒からの評価でもあるし、僕自身の開示の場に、また生徒同士の交流も場にもなっている。なによりも生徒一人一人の事を知るためにものすごく役にたっている。前の時間の復習にもなるけれども、大半は授業を離れた話題ばかりでこれも1つの余談だと言えないこともない。元々のアイデアはミステリ作家の森博嗣氏の著作から頂戴した。


要は、余談が苦手なためにこんな回りくどいことをしているのです。という事と、これも僕が彼らに自分の話を聞いてもらうために作った1つの「型」なんです、という話。

*1:齋藤孝氏の著作で見つけた