今日の短編(76) レイモンド・カーヴァー「私にはどんな小さなものも見えた」

やりつづけていないと、どうしようもないことになってしまうことって、どんなことがあるだろう。大多数の人にとっては真夜中に隣家の木戸を開けて壺一杯のなめくじを取ることではあるまい。何かにとらわれようと思ったときのヴァリエーションの豊富さは、人の数ほどあるのかもしれない。

「これをずっとやりつづけていないと、どうしようもないことになってしまうんだ」彼はなめくじでいっぱいになった壺に懐中電灯の光をあてた。「餌を撒いてさ、とにかくしょっちゅうこいつを持って見まわりに来る。なにしろうようよといやがる。放っておいたらえらいことになるんだよ、ほら」と彼は言った。

愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー)

愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー)

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