今日の短編(73) レイモンド・カーヴァー「ファインダー」
両手がない男が家の写真を売りつけようとある男の家を訪ねる。それだけでもクエスチョンマークがいくつか頭の上に点灯しそうなシチュエーション。訊ねていった先の男もまたどこかずれた感じの中年男。シリアスに考えると恐いんだけど、そこは直視しないで、「メインストリートからは外れちゃったんだよね。仕事も家庭もなんだかうまくいかなくってさ」なおじさんたちのトホホな感じがおかしい。
- レイモンド・カーヴァー「ファインダー」 (Viewfinder by Raymond Carver)
「どうして両手を失くしたりしたの?」彼が用向きを述べたあとで、私はそう訊ねてみた。
「そんなことどうでもいいでしょ」と彼は言った。「写真を欲しいの?それとも欲しくないの?」
「まあ中に入れば」と私はいった。「ちょうどコーヒーいれたところだから」
愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー)
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