風が強く吹いている

風が強く吹いている

風が強く吹いている

生徒に進められて読んだ一冊。夢中になって読み終えた。電車の中で何度も涙腺が刺激された。早速今日の授業で紹介した。良い文章がたくさんあって、なかなか1つに絞れない。悩んだ挙句次の箇所を選んだ

「長距離選手に対する、一番の褒め言葉がなにかわかるか」
「速い、ですか?」
「いいや。『強い』だよ」
清瀬は行った。「速さだけでは、長い距離を戦いぬくことはできない。天候、コース、レース展開、体調、自分の精神状態。そういういろんな要素を、冷静に分析し、苦しい局面でも粘って体をまえに運びつづける。長距離選手に必要なのは、本当の意味での強さだ。俺たちは、『強い』と称されることを誉れにして、毎日走るんだ」

マラソンを駅伝を興味を持って見られたことがなかった。あんなに苦しそうなことを何故、わざわざ好んでするんだろうと思っていた。そんな僕にも走ることの、長距離を走ることの苦しみと喜びが感じられた様な気がする。「がんばれ、走れ!」読みながら心の中で応援していた。こんな読書は本当に久しぶりだった。これからはマラソンや駅伝を見るときの目が変わるだろう。

いつもは2、3分での紹介にとどめるのだけれども気がついたら5分以上話していた。授業の後の質問紙に「先生、かなり熱くなっていましたね」と書かれてしまった。

「俺たちなら、絶対にうまくいく。双子」
呼びかけられて、ジョータとジョージは顔をあげた。
「頂点を見せてあげるよ。いや、一緒にあじわうんだ。楽しみにしてろ」

この登場人物の一人、ハイジのセリフが、もう、なんと言うか、殺し文句満載。この根拠があるんだかないんだか分からない彼の勢いにみんな目がくらんでしまうのだ。

「大手町で!」
そこで再会したとき、竹青荘の住人たちはどんな表情をしているのか。
楽しみだ、と走は思った。こういう気持ちになったことは、いままでなかった。だれかに会えるのをこんなにたのしみにしたことは。誰かが待つ場所へ、早く走ってたどりつきたいと願うことは。
いままではなかった。走る喜び。苦しみを凌駕してなお、胸に燃える理由。
再び会うために。会って、ともに走ったことを喜びあうために。
明日も戦う。全力をもって。

走りは、走を一人にするばかりではない。走りによって、だれかとつながることもできる。走るという行為は、一人でさびしく取り組むものだからこそ、本当の意味でだれかとつながり、結びつくだけの力を秘めている。
清瀬に会うまで、走は自分の持つ力に気づけていなかった。長距離とはどういう競技なのか、よくわからないまま走っていた。
走りとは力だ。スピードではなく、一人のままだれかとつながれる強さだ。

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