小林秀雄全作品から(9)「ボオドレエルと私」

  • 昭和29年(1954)4月、「ボオドレエル全集」内容見本に発表

ボロボロになるまで愛読した本なんてこれまであっただろうか。小学生の頃は江戸川乱歩の少年探偵団シリーズと、南洋一郎翻訳の「怪盗ルパン」全集がとても好きだった。中学に入ってから栗本薫の「グイン・サーガ」に出会ってノックアウトされて夢中になった。何度も読んだと思うけれども、そもそもシリーズものなので好きと言っても5回以上読んだ巻はないと思う。高校に入って大江健三郎に出会って、読みあさった。「懐かしい年への手紙」は何度も読んだ。今33年間の読書を振り返って、これは、と思うものが1冊だけある。

栗本薫の「レダ」だ。少年イヴ、あまりに自由すぎて、不自由そうなレダ、彼女を見守るアウラ、そして知能を持たされた犬ファン。少年が自分自身を見つけ成長していく物語に自分を重ね合わせて、何度も何度も、何度も読み返したことを思い出す。

僕も詩は好きだったから、高等学校時代、「悪の華」はボロボロになるまで愛読したものである。併し、語学の関係もあり、その魅力が十分に味えたとは決して思っていない。

小林秀雄全作品〈21〉美を求める心

小林秀雄全作品〈21〉美を求める心

 所収