M・プルースト「現実の存在」

眩いばかりの雪と隣あっている時には、あれほど黒々と静まり返っている唐松の森が、淡青の、ほとんど薄紫の湖水に、快い艶を帯びた緑の枝を差し伸べていた。

あの年、ぼくは貴方に一度も話す機会ももたなかったし、貴方はぼくの目から遠く離れてさえいた。

高校生のための文章読本

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