(手帳2)一番古い記憶

自分史を書いてもらうために、授業のたびに一つの質問に答えるメモを取り続けてもらったことがある。7ヶ月か8ヶ月くらいかけて答えてもらった30数個の一番最初の質問が「あなたの一番古い気を句を教えてください」であった。お、と興味を引いてもらいやすい、かつ自分にしかわからない、自分の中のもやもやに形を与えるその最初の問として、とても良い質問だと思う。

  • (手帳2)一番古い記憶 高校生のための文章読本より

記憶は、その当事者にしか思い当たらない。そしてことばでわかるように伝えない限り、決して他人には理解できない。その意味で”自分にしか書けないこと”を”だれが読んでもわかるように書く”材料として最適なのである。
だれでも一番古い記憶を探ってみると、ぼんやりとした断片的な映像が浮かんでくる。脈絡や因果関係は不明のまま何か言葉にしにくい独特の雰囲気や感じだけが残っている。そのぼんやりした、ある感じを、言葉で再現していくことになる。

高校生のための文章読本

高校生のための文章読本

 所収