今日の短編(23) レイモンド・カーヴァー「ナイト・スクール」

ただ酒にありつけてラッキー。なんとなく話はあわせられたし、時間もつぶせた。後ろを向いた人生はつらそう。
レイモンド・カーヴァー「ナイト・スクール」 (Night School by Raymond Carver)

悪夢を見る男がいる。彼はその悪夢の中で、自分が夢を見ているところを夢に見るのだ。そして目が覚めると、ベッドルームの窓のところに男が一人立っているのが見える。その夢見る男は怖くて、動くことができない。息をすることさえおぼつかない。その窓の男は部屋の中をじっと覗きこんでいる。それから網戸をこじ開けにかかる。夢を見ている男は身動きすることができない。彼は悲鳴をあげたい。でも息を吸い込むことができない。しかしそのとき雲が切れて、月が姿を見せる。そして彼は外に立っている男が誰かを見分けることができた。それは彼の一番の友達だった。夢を見ている男の一番の親友、でもその悪夢を見ている人間にとってはまったく知らない男だ。

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

所収。