今日の短編(21) レイモンド・カーヴァー「60エーカー」

いつまでも変わらない、変えられない習慣。背負ってきたものを降ろすときの決断はいつでも不安とためらいと共にある。
レイモンド・カーヴァー「60エーカー」 (Sixty Acres by Raymond Carver)

行かずに済ませることができたらな、ともう一度考えながらトラックの方に向かった。彼は昨夜また夢を見たのだ。どんな夢かは思い出せない。でもそのおかげで目が覚めてからずっと気持ちが落ち着かなかった。彼はロー・ギヤでゲートのところまで進み、車を下りて扉を開けた。外に出るとまた車を下りて扉を閉めた。もう馬は飼っていなかったが、習慣は身にしみついていた。扉はいつも閉めておくこと。

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

所収。