今日の短編(12) ルイス・ロビンソン「ライド」

補助車輪はいつの間にかはずせるようになっている。それがもう必要ないことに、いつ、気が付くかどうか。
ルイス・ロビンソン「ライド」(RIDE by Lewis Robinson)

父親は腕時計に目をやり、夜中の十二時を過ぎて日にちが変わると、派手にエアホーンを鳴らす。空気が少なくなったという警告を圧力計が発するまで、タンクを開き続ける。オールデンは両手で耳をふさぐ。彼はその轟音が森を抜け、崖に跳ね返り、動物たちの目を覚まし、どこか遠くのほうで―――凍りついた池か、あるいは雪の積もった野原で―――旅程を終えるところを思い浮かべる。
「というわけで」と父親は言う、「誕生日おめでとう」

バースデイ・ストーリーズ (村上春樹翻訳ライブラリー)

バースデイ・ストーリーズ (村上春樹翻訳ライブラリー)

所収。