今日の短編(12) ルイス・ロビンソン「ライド」
補助車輪はいつの間にかはずせるようになっている。それがもう必要ないことに、いつ、気が付くかどうか。
ルイス・ロビンソン「ライド」(RIDE by Lewis Robinson)
父親は腕時計に目をやり、夜中の十二時を過ぎて日にちが変わると、派手にエアホーンを鳴らす。空気が少なくなったという警告を圧力計が発するまで、タンクを開き続ける。オールデンは両手で耳をふさぐ。彼はその轟音が森を抜け、崖に跳ね返り、動物たちの目を覚まし、どこか遠くのほうで―――凍りついた池か、あるいは雪の積もった野原で―――旅程を終えるところを思い浮かべる。
「というわけで」と父親は言う、「誕生日おめでとう」
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/01
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