今日の短編(2) デニス・ジョンソン「ダンダン」
ジョンソンは迫力のある優れた作家だが、どう考えても万人向けの作家とは言えない。作品にはかなり力加減のムラがあり、野球のピッチャーでいえば、いいときはめっぽういいんだけど、行き先はボールに聞いてくれ、みたいなところがあり、(略)
作品の頭に村上春樹が述べていた上記の言葉が、なんだか、とても腑に落ちる感じがした。この一作品しか読んでいないのに。言葉の放り出され方というか、突拍子のなさというか、あっけなさ感というか、乾燥した感じというか・・・。結構好み。「行き先はボールに聞いてくれ、みたいな」って比喩、いいなぁ。
デニス・ジョンソン「ダンダン」(DUNDUN)
僕は心配になった。「なあ、病院とか連れていかなくていいのか?」
「グッド・アイディアね」とビートルが嘲るように言った。
「そうしようとはしたんだ」とホテルが説明した。「でもそこの納屋の角に突っ込んじまった」
横手の窓から外を見た。それはティム・ビショップの農場だった。ティム・ビショップの所有するプリマスは、グレイと赤のなかなか素敵な、古い型のセダンだったが、それは納屋の角に突っ込んで、今では柱の一本のかわりをつとめていた。柱は地面に転がり、車がそのかわりに納屋の屋根を支えているのだ。
「フロントグラスはばりばりのひびだらけだ」とホテルは行った。
「なんでまたあんなところにぶつかったんだ?」とぼくは尋ねた。
「何もかもが手に負えなくなっちまってな」とホテルが言った。
彼の心には優しさがあったと言って、あなたはそれを信じてくれるだろうか?彼の左手は、右手が何をやっているのかを知らなかったのだ。そのあいだの、ある大事なコネクションが燃え尽きてしまっていたというだけのことなのだ。もし僕があなたの頭を開いて、あなたの脳にひょいひょいとはんだごてをあてるだけで、あなただったそんな人間になってしまうかもしれないんだよ。
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